インド政府Ayush省ヨーガ教育能力検定試験
さっそくですがヨーガを実習しているみなさん、こんな経験はありませんか?
- ポーズ以外の練習をしたことがない。
- 担当の先生によって言ってることが違っていて、結局YOGAって何かわからない。
- ヨーガクラスと言いながら、宗教に勧誘されそうになったことがある。
- パタンジャリってなんのこと??
- ハタ・ヨーガってなに?ハタさんが作ったヨガのことでしょ?
実はこれ、ヨーガにおいて起こりがちな問題なのです。でもなんでこういうことが起こってしまうのでしょうか??
西洋医学の分野では医師や看護師には国家資格がありますし、医薬品には国の定めた品質管理基準があります。一方でいわゆる民間療法には科学的根拠がなかったり、各種サプリメントは食品に該当するため品質もマチマチで、時に安全性に問題が指摘されることもあります。
ヨーガにもその特性から科学的根拠が不十分であったり、品質管理が難しいと言う側面があります。これはヨーガ以外の伝統/補完代替医療の分野でも同じことが言えます。
そしてこの問題を解決するのが、今回なトピックであるインド政府主導のヨーガ基準/資格であるYCBになります。
インド以外の諸外国ではまだあまり知られていませんが、ヨーガの本家インドでは、2008年からヨーガの規格化がすすみ、2015年から政府公認のヨーガ資格制度が始まっています。ちなみに2015年は国際ヨーガ・デーが始まった年でもあります。
この基準により、ヨーガインストラクターやヨーガ教師の質を保つことができます。それによりヨーガそのものの質を保ち、クラスに通う方を守ることに繋がります。インド国内では特に、公的な場所でヨーガ指導をする場合に必要不可欠な資格です。
この資格ですが2015年の開始当時はQuality Council of India/QCI (日本語で言う)インド品質評議会という政府機関が担当していました。そして2018年からはさらにヨーガとしての専門性に特化したYoga Certification Board /YCB という政府機関に運営がかわっています。このYCB/Yoga Certification Board は、意訳で「ヨーガ教育委員会」と理解することができます。そしてこのYCBが運営する試験は「ヨーガ教育能力検定試験」ということができます。これはヨーガを職業として指導する場合に必要な基礎知識および能力を検定する試験です。
その為この検定試験はインドの各種ヨーガ・トレーニングコースに組み合わされ、ヨーガインストラクターや教師を目指す人は、トレーニングコース修了時の独自の修了試験とともに、このYCB試験を受験することになります。例えば私はカイヴァリヤダーマ・ヨーガ・ヨーガ研究所のディプロマコースを受けたのですが、2018年にKdhamの修了試験を受けるとともに、現在のYCB試験に相当する、当時のQCI 試験も受験しています。
現在このYCB認定の資格制度は大きく3つのカテゴリーに分けられています。
1つ目は一般的なヨーガ教育トレーニング部門で、この中に5つのレベルがあります。
2つはヨーガ・セラピー部門で、この中に3つのレベルがあります。
そして3つ目は学校教育におけるヨーガ教育トレーニング部門で、この中に2つのカテゴリーがあります。
このように一般的なヨーガ資格に加え、
ヨーガ・セラピーに特化したもの、教育現場でのヨーガ指導に特化した資格が選択できるようになっています。
ちなみにこれらの分類も軽く触れておきます。
ヨーガ・セラピー部門の3レベルは以下:
- アシスタント・ヨーガ・セラピスト
- ヨーガ・セラピスト
- セラピー的ヨーガ・コンサルタント
学校教育におけるヨーガ教育トレーニング部門2つのカテゴリーは以下:
- 初等教育におけるヨーガ教育とトレーニング
- 中等教育におけるヨーガ教育とトレーニング
今日は最も一般的なヨーガ教育トレーニング部門の5つのレベルについて詳しく見ていきたいと思います。
ヨーガ教育トレーニング部門5つのレベル:
- ヨーガ・ボランティア
- ヨーガ・プロトコール・インストラクター(YPI)
- ヨーガ・ウェルネス・インストラクター(YWI)
- ヨーガ・ティーチャー& エヴァリュエーター(YT&E)
- ヨーガ・マスター(YM)
現在は試験運営の便宜上2つめのYPI から順番にLevel1, Level2, Level3, Level4と呼ぶ場合もあります(2023.4現在)
ここで全部の資格について簡単に見ていきたいと思います。
まず初めのヨーガ・ボランティアという資格ですが、シラバスに沿った36時間の講座に参加することで資格を取得することができます。特に試験はありません。
国際ヨーガ・デーにボランティアとして参加したり、AYUSH省作成の職場用ヨーガプログラムであるY-BREAKを指導することができます。ちなみにこのY-Breakはたった5分の間にアーサナ、プラーナーヤーマ、メディテーションが入ったインド的ヨーガの最短プログラムになります。
次にヨーガ・プロトコール・インストラクターですが対応する200Hrs相当のトレーニング・コースを受けていることが望まれます。これは3ヶ月程度のパートタイムコースや、1ヶ月程度のフルタイムコースに相当します。
国立ヨーガ研究所からリリースされているヨーガ・プロトコールの指導をしたり、公園や公共の場でヨーガを指導できるという資格となります。この資格は現在日本でも全日本ヨガ検定協会により試験が運営されていて、合格された方が日本各地で活躍されています。
ちなみに試験は1日目に筆記試験、2日目に実技試験があります。筆記試験の会場は東京のインド大使館です。実技試験も大使館近くの都内会場にて行われています。
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次のヨーガ・ウェルネス・インストラクターは対応する400Hrs相当のトレーニング・コースを受けていることが望まれます。これは6ヶ月程度のパートタイムコースや、3ヶ月程度のフルタイムコースに値します。
これは学校、ヨーガスタジオ、職場など様々な場所で疾患予防や健康増進を目的としたヨーガ指導ができるという資格となります。
このレベルの資格は現在日本では行われていませんが、インドの試験運営団体との協働で日本からオンラインで試験が受けられるよう準備を進めています。
次のヨーガ・ティーチャー& エヴァリュエーターは対応する800Hrs相当のトレーニング・コースを受けていることが望まれます。800時間というと15ヶ月のパートタイムコースや、9ヶ月のフルタイムコースに値します。このレベルの取得の為には、基本的にインドに長期留学し対応するコースを履修することが必要になります。
この資格はヨーガ・スタジオはもちろん、各種ヨーガ教育機関やカレッジ、高等教育の場面でヨーガ教師として指導ができるものとなります。いわゆるインストラクター養成コースでの指導を行い、ヨーガ検定試験で試験官を務めることができます。
そして最後にヨーガ・マスターです。これは1600Hrs相当のトレーニング・コースを受けていることが望まれます。これは大学院の修士課程2年分に値します。そしてヨーガ教育やトレーニング・プログラムを統括する立場を担い、指導者、試験官、そして管理責任者としての役割を果たします。
私の場合2021年にプネー大学修士課程ヨーガ専攻を修了し、2022年8月にこのヨーガ・マスターを取得しています。
ちなみに大学院レベルにおいては、UGC-NET(NET/ National Eligibility Test
University Grants Commission)という大学助成委員会による全国大学講師資格試験というものがあります。試験にパスすると、その後の博士課程の入学に有利になったり、大学で助教として働く道がひらけます。
このように今はヨーガが一般的なキャリアの選択肢の一つになるような資格化/学歴化が起こっているのがインドでのヨーガの現状です。
さて、ここでYCB試験に興味はあるけど、
具体的にどんなことが出題されるの?
どのように勉強を始めたらいいの?
どんなヨーガ・トレーニング・コースを選んだらいいの?などの質問が出てきているかもしれません。
YCBのホームページには、各レベルの試験範囲のシラバスがダウンロードできるようになっています。
また全日本ヨガ検定協会のサイトにもヨーガ・プロトコール・インストラクターの試験範囲についての日本語での記載があります。
またこのシラバスについては改めて解説をしていきたいと思います。
またこの試験が始まった2015年にQCIからヨーガの公式ガイドブックが出版されています。
このガイドブックはオレンジ色と白色の2種類があり、オレンジ色は旧QCI Level1 (今のインストラクター向け試験) 、白色は旧QCI level1&2 (今のヨーガ・ティーチャー向け試験)までに対応しています。
オレンジ色のインストラクター向けのガイドブックは以下の全10章で構成されています。
1章ヨーガとヨーガ実習の概要
2章ハタ・ヨーガの概要
3章パタンジャリ・ヨーガの概要
4章人体の仕組みと、ヨーガと健康の概要
5章ウェルネスのためのヨーガ
6章ヨーガとストレス・マネージメント
7章関節と運動について
8章スーリヤ・ナマスカーラとアーサナ
9章プラーナーヤーマとメディテーション
10章指導実習
1-3章はインド伝統文化をはじめ、パタンジャリのヨーガスートラを主軸としたインド哲学、そしてハタ・ヨーガの内容となります。
4-6章は現代的健康科学への応用分野、7-9章は主要なヨーガ実習について、10章は指導法となっています。YCB試験においても、このような内容を全般的に知っていることが求められます。
またこのYCB試験合格に向けたヨーガ・トレーニング・コースの選択には、IYAという言葉がキーワードになっていきます。
IYAとはIndian Yoga Association/インド・ヨーガ協会の略でインドのヨーガ業界団体のことです。このIYA提携校であれば、コースのカリキュラムがYCB試験に対応したものになります。インドヨーガ協会の詳細についてはまた改めて紹介していければと思います。
今日はインド政府Ayush省主導のヨーガ資格制度であるYCB試験について紹介をしてきました。このように資格制度が整備され、公的な基準や知識のスタンダード化が進むことで、インストラクターや教師から提供されるヨーガの質が向上し、それはクラスへ参加される方を守ることにもつながります。
きちんとした資格をもった先生のところで学ぶことによって、冒頭のような、
ポーズ以外の練習をしたことがない。
担当の先生によって言ってることが違っていて、結局YOGAって何かわからない。
ヨーガクラスと言いながら、宗教に勧誘されそうになったことがある。
パタンジャリってなんのこと??ヨーガ哲学ってなに?
ハタ・ヨーガってなに?羽田さんが作ったヨガのことでしょ?
こういうエラーを防ぐことにもつながります。
今は日本人向けに、インドとのオンラインでYCB試験が受験できる体制作りや、YCB試験に準じたアカデミックコースを準備しています。ヨーガの発祥地インド、そんなインドが示す政府主導のヨーガ資格について、世界でもさらに認知が高まっていけばと思います。
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